THE WALL STREET JOURNALが、トランプ政権に代わってH1-Bビザに与えうる可能性について記事にしているので紹介します。
「H-1B Visas: How Donald Trump Could Change Americas’s Skilled Worker Visa Rules」by Newley Purnell
H1-Bビザとは?
H1-Bビザは専門職ビザとも呼ばれていて、外国人がアメリカで就労する際に一般的に取得するビザです。
よく言うシリコンバレーの優秀なインド人エンジニアをはじめ、アメリカの企業で働く現地採用の外国人の多くは、このビザで働くことができます。
現行の制度は?
- 年に1回(毎年4/1~)の申請機会があり、年間発行上限が65,000枠と決まっている。
- 応募が上限以上であれば、抽選によって上限数まで落とされる。
- 抽選を通った人のみ審査を受ける。
- 審査を通れば10/1付でビザ発行(もちろん落ちることもある)
抽選とはまたフェアなようでアンフェアなルールですが、もちろん優先権を持つ人もいます。
- 修士以上の学位を持つ人には65,000枠のうち一定の優先枠があり、優先枠だけでの抽選がある。落ちた場合は一般枠の抽選にも参加できる。
2008年以降は、リーマンショックで落ち込んだアメリカの景気が上向き基調であることから、米企業の外国人採用は積極化していて、65,000枠に対して応募数は増加傾向にあります。
ここ2,3年は、抽選倍率3倍程度となっており、この倍率が高いかどうかは人それぞれ判断が違うと思いますが、僕自身は抽選に外れているので、めっちゃ高くて勘弁して欲しいと思っています。。
トランプ政権で起こりうる変化は?
トランプ政権のメッセージはシンプルで、「アメリカ製のモノを買え、アメリカ人を雇え」と。
つまりアメリカにちゃんとカネが落ちる仕組みにすることが最優先事項です。
それを念頭に置いて、以下のような変化が予見されています。
1.米大学卒の優等生の優先
高給を稼ぎ、価値あるスキルを持った、アメリカの大学で優秀な成績を修めた外国人を優先的に雇用していくだろうという見方。
抽選ではなくて、ちゃんと優秀なやつを見極めろってことですね。
しかも、「アメリカの大学で」と入っているところにも、やっぱりアメリカにカネを落としている学生に優先権があることが示唆されています。
2.STEM政策の廃止と厳格化
STEM政策を白紙に戻し、優遇される学問領域を厳格化するという見方。
“STEM”とは、Science, Technology, Engineering, Mathの理系学位を持つ人材のことです。
2008年のブッシュ政権以降、通常は12ヶ月しか認められていないOPT(Optional Practical Training=インターンビザ)の期間を、STEM人材に限り36ヶ月に延長されていました。
通例、アメリカの大学生は在学中にインターン先を探し、卒業後にOPTで企業で働きます。
OPT先の企業が気に入ればH1-Bビザのスポンサーとなって労働ビザを取得し、そのまま雇用するという流れが一般的です。
STEM人材は、OPTで3年間働けるので、例えビザの抽選で外れたとしても、最長3回応募できるチャンスがあります。
つまり、毎年積み重なっていく応募者により、どんどん抽選の倍率が高くなっていきます。
トランプ政権下では、一旦この制度を白紙に戻し、優遇されるべき学生をもっと絞るということだそうです。
本当に稼げる優秀な学生だけを優遇したいという意志の表れですね。
今後、トランプ大統領が政策を実行するに当たっては、議会承認を得るなど越えるべきハードルはありますが、これまでの彼の実行力を目の当たりにすると、ポピュリズムの優勢な今の世論のもとでは多くの部分で持論が実現されるように思います。
今年もビザの申請を来月に控え、応募される方は心配が絶えないことと思いますが、少しでもチャンスが多く残ってくれたらなと、祈りに余念がありません。